その緋色を「宝玉のような」と形容したところ、彼は笑って瞳を閉じ、言ったのだった。

「“宝玉”の定義を述べよ」

「…定義って」
「意味」
「意味って、そりゃ…宝玉だから…、宝石?」
「“宝石”は違うな、美しい鉱物のみを示す言葉だ。“宝玉”はもう少し意味の幅が広い」
「ええと…要するに?」
「要するに、“宝玉”とは貴重な価値ある玉…といった意味合いの語句だ」

先ほどまでの行為によって汗ばんでいた肌が、少しずつ元の温度に戻ろうとしている。
完全に冷めきる前に、と俺はシーツを引っ張り二人に掛けた。

「だから、お前の表現は正確でないな」
「?」
「私のあの色の眼は。宝玉のような、ではなく宝玉そのものだろう」

言って再び開かれた瞳は、既に平常の色彩を映していた。
自らの身体の一部を臆面もなく 『 宝玉 』 だと言ってのける大胆さは常には傲慢として嫌われる類のものだろうが、しかし彼の場合は誰しもに許容されるだろう。広く認められている数億という価値、そしてこの世に生存する最後の一対という稀少さは、否定するべくもない。
(ただし、それが悲哀と苦痛と憎悪を入り混ぜた情を伴うものである事もまた)

「…でも別に、それは」
俺は呟くようにして答えた。

「今の色だって、俺にとっちゃ宝玉そのものだから」

答えた途端、クラピカは小さいけれど弾けるようにクスクスと笑い始めた。
「言うと思った」 「お前ならそう言うと思った」 「絶対言うと思った」

俺も少し笑い、右手で彼の蜜色を梳きながら思った。
ああ、俺はまた合格したのだと。


彼は時折、ここが安らげる場所・時間である事を確認しようとする。
俺は素のままで彼の言葉に答えまたは応え、その後にそれが一種の試験であった事に気付く。
俺の傍に安心と安堵と充足がある事を確かめて、彼はまた俺に身を寄せるのだ。

…それはとても傲慢な ( だけど彼のみに許される、 )