(※前提条件は「死神の鎌」選択肢Aと同じなので省略)

クラピカが心を取り戻したところで、目的も希望もない毎日に蝕まれるだけだ。
それよりもこうして、オレの側にいればいい。そうすれば、ずっと守ってやれる。腕の中に隠して、傷付けさせやしない。
オレが縛り続けていれば、もう鎖に縛られることもない。

二人で眠るために買い替えた広いベッドで、クラピカを壁側にして寝かし付ける。
クラピカを護れるように。クラピカを、逃がさないように。




オレの用意した飯。オレの用意した服。
オレが洗い上げた体、オレが梳かした金髪。
オレが入れてやるコンタクトレンズ、履かせてやる靴。
オレが指定する就寝時間、起床時間。

オレは今日も、クラピカの全てを独り占めする幸福感に酔いしれる。




夜はいつも、二人の時間だ。
オレの部屋という密室で、無抵抗かつ無表情のクラピカの、無地の服をそっと脱がせ、無垢な身体を露わにする。
クラピカは恥じらいも緊張もなく、無防備な肌をオレに曝け出す。
無造作に無力に横たわる身体は、オレに触れられても固く強張ることはない。
それでもオレは以前のように、ゆっくりとクラピカに触れ、優しく溶かしていく。何も過去の幻影を求めているわけではない。たとえ無反応であっても、こう扱われることをクラピカは望んでいる。それがオレの直感だった。

虚無を見詰めるように動かないクラピカだが、しかし快楽には確かな反応を見せる。
息を上げ、眉尻を下げ、半開きの目を赤く染める。ただし、刺激に対して身を捩るだとか、身体を仰け反らせるようなことはない。全身の力を抜いてオレに身を委ねたまま、ただ、快楽の色に身体を染め上げていく。
敏感な肌を撫で上げると、ビクンと震える代わりに、ただ赤い瞳を大きく見開く。
荒い吐息には少しだけ、クラピカの音が混じる。声、と呼ぶにはあまりにも淡い、微かに声帯の震える音。クラピカの音を聞けるのはオレだけだ。

全身が脱力しているためか、慣らしておけば挿入はスムーズで、クラピカは呼吸こそ苦しげだが問題なくオレを深く受け入れる。
刺激に耐えようと目を閉じる意思は持たない。だからオレに突き上げられながらも、その眼はオレに極上の色を見せ続ける。オレと繋がったまま絶頂を迎えた瞬間は、この世に二つと無い、いや二つしかない、最高の煌めきを見せつける。

今のクラピカは、誰が相手でもこうして受け入れてしまうのだろう。
けれどオレ以外では、この極上の緋色を見ることは決して叶わないのだ。




折に触れ、クラピカに所縁のあった者達が、クラピカに会おうとオレに電話をかける。
「今は不安定だから」。そう断われば、誰もそれを疑わない。
旧知の者との接触が、辛い記憶を揺り戻す呼び水となっては堪らない。

クラピカが集めた緋の眼は、クラピカが以前望んでいたとおり、クラピカの故郷へと埋葬してもらった。
縛られた記憶は要らない。クラピカはオレだけを見て、オレと重ねた時間だけを思い出せばそれで良い。

誰にも傷付けさせやしない。オレの腕の中で、オレに縛られている限り。




夜はいつも、二人の時間だ。
だが昼の診察中は、患者の手前、別室で待たせなければならず、それだけが心もとない。
しかしそれも、あと少しの辛抱だ。

「旅に出よう、クラピカ」

この診療所は、医薬品の入手ルート等を確立するための、ただの足掛かり。旅の目的は、世界中を巡って病気の子を無償で治す、クラピカにも語ったことのあるオレの夢。
診察室も患者待合室もない毎日の中、二十四時間いつも手を握れる距離にいよう。
見たことのない景色を、たくさんお前に見せてやろう。いつか心が戻っても、お前を構成する要素が変わって、新しいお前になるように。毎日をオレに依存した、新しいクラピカになるように。




クラピカとオレとの時間は、今日も静かな幸福に満ちている。
オレだけのために毎夜輝く、極上の緋色を証左として。

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書いてみたら、あまり軟禁にならなかったです。
壊れたクラピカとの壊れセックス萌え

'17.9.20