クラピカの服をすべて脱がせてベッドに横たえ、オレもその上に重なり、まずは触れるだけのキスを交わした、
そのタイミングだった。
クラピカの右手、薬指から伸びた鎖が、オレの左手とクラピカの右手を密着させるように、ぐるぐると巻き付いた。
更に、そこから伸びた鎖がクラピカの首に巻き付いた後、オレとクラピカの首をぐるぐると回って繋いだ。首の方は密着はせず、一定の距離を保ってはいるが。

「えーと、クラピカ?」

クラピカは、悪戯な微笑をオレに向けている。今日はこの状態でしろ、ということか。
左手はクラピカと繋げられて使えない。右手は自由。
問題は、首だ。クラピカの首と繋がって一定以上離れられないこと自体は、不自由だが別に良い。問題なのは、クラピカの首にだけ鎖が巻き付き、オレには巻き付いていないことだ。オレはクラピカというネックレスを掛けているような状態で、鎖は首の後ろにしかない。うっかりと距離が離れ、鎖を引いてしまった場合、オレは不自由なだけだが、クラピカは鎖により首が絞まり、呼吸を封じられることになる。

「これじゃアンフェアだろ。オレの首にも巻けよ」
「断わる。面白味がない」

せいぜい気を遣ってみせろ、とでも言いたげだ。
何故こんな突飛な行為を思い付いたのか問い質してみたい気もしたが、やめた。どうせクラピカは答えない。

「ん……ッ、……っ」

唯一自由な右手で腰から脇腹を撫でると、クラピカはピクリと震えて息を飲み、それから少し顔を逸らした。
しばらくは手のひら全体で撫でる。強張りが解けた頃に、五本の指の腹で肌を辿っていく。
そんな淡い刺激でも、クラピカは切なげに眉を寄せ、呼吸を熱くする。
指先で乳輪を探り当て、胸粒の周囲でそっと円を描くと、クラピカはますます悩ましげに息を乱した。

「ふっ、……あ、ぁ、」

胸先を、ギリギリ触れるか触れないかの位置でゆっくりと擦る。
クラピカはもどかしげに首を振り、オレと絡め合わせている手を強く握り込んだ。
首の位置を動かせないため見えないが、きっとその愛らしい粒は、淡く色付き、膨れ上がっているに違いない。

「クラピカ、」
「っ、…あ……ッ」

耳元で名を呼んでから、耳たぶを食む。首を動かした拍子に、鎖の擦れる金属音が響いた。
耳の全体をじっくりと味覚で確かめてから、耳の中へと舌を差し込む。

「ん……ッ、んん………っ!!」

耳の中を掻き回すように、濡れた音を響かせる。
指先では、もう片方の胸先をきゅっと摘まむ。
息を震わせ、時にビクリと体をも震わせて、クラピカは少しずつ、与えられる快楽にその身を委ねていく。

「はぁ……、…は………ぁ…」

一度、顔を離し、右手での刺激も止める。
クラピカは息を整えるように深めの呼吸を繰り返し、そして閉じてしまっていた瞼を開いた。
既に欲情に濡れたそれは、赤。
オレの次の動きに怯えるように、もしくは待ち構えるように、半開きの瞳はじっとオレを見詰める。
右手のひらで太腿を撫でると、その瞳は戸惑うように少し揺れ、しかしそれ以上の反応を見せなかった。

……心なしか、いつもより余裕があるように見える。
当然かもしれない。オレは片手しか使えず、首の位置も制限されている。必然的に、クラピカへの触れ方は限られ、首から下は右手でしか触れられない。
それでもクラピカと触れ合うには充分だと思っていたが、それがクラピカに僅かなりと余裕をもたらしているのなら、少しばかり不本意だ。クラピカの言葉を借りれば、“面白味がない”。

考えた末、オレは右手から、手のひらサイズのオーラの塊を放出した。それを、そっとクラピカの肌に這わせてみる。

「………ッ!?」

クラピカは驚いたように身を竦めた。
単なるオーラの塊に実体はない。温かくも冷たくもない、硬いようで柔らかい、独特の触感を持つ。
肌との摩擦は生じないため、さながらローションを塗りたくったかのように、滑らかに肌の上をすべっていく。

「………ッレオリオ、これは一体…」
「念の系統別修行、放出系レベル3。オーラの球を複数、体から離して一時間以上維持、自在に動かす。……の、応用」
「複数……」
「そう、増やす」

放出した手のひら大のオーラは、計五つ。
肌を這うオーラが一つ増えるごとに、クラピカの表情に焦りと戸惑いが増していった。先ほど感じられた余裕は、今は跡形もない。

「ふざけた真似を……ッ」
「ンだよ、先に念を使ったのはお前だろ」
「………っ」

クラピカは悔しそうに顔を逸らし、目を伏せた。
オレはクラピカの自由な左手首を右手で押さえつけ、抵抗を封じる。
五つのオーラの塊は、オレの命令どおり、クラピカの体を好き勝手に這う。さながら五つの手のひらに撫で回されているような感覚だろう。クラピカの上半身も、下半身も。スピードはランダムだ。

「…………ッ、……ッ」

ついさっきまで素直に声を上げていたくせに、クラピカは歯を食いしばり、声を堪え始めた。
こんな行為は不本意であると、暗に主張しているのだろう。
オレとしては、声を上げるクラピカも、抑えるクラピカも、どちらも平等に可愛いと思うし、可愛がりたいので問題ない。
ただ全身を撫でられているだけとはいえ、いつもとは異質な刺激に感覚が追い付かないのだろう。クラピカは身を捩ったり、オレの体で開かされている足を振り上げたりと、それなりに良い反応をしてくれる。

オレは、静かに堪えるクラピカの表情をただ観察した。
オーラは一度命令すれば、オレが何も意識しなくとも自動で動く。だから、快楽に悶えるクラピカの表情を眺める行為には、まるで他の誰かに愛撫されて感じているクラピカを側で見守っているような倒錯感があった。もちろん、本当に他の誰かにヤられているのなら耐え難いが、オレのオーラなのだから問題ない。

「……ッあ、………っ」

一瞬だけ、小さく漏れた声。
最も敏感な根を擦られたのか、胸先を責められたのか、それとも意外に、足の裏でもくすぐられたのか。
各オーラの位置は、当然オレは見えなくとも把握できるが、あえてその感覚は遮断している。純粋に傍観者としてクラピカを観察する方が、興奮するからだ。

「………ッ、………!!」

オレの体を挟み込んでいるクラピカの脚が、ピクピクと痙攣するように震えている。歯を食いしばったままの顔には、汗が滲んでいる。
おそらく、敏感な部分も何度も撫でられて、既に勃ち上がってしまっているのだろう。
クラピカの肌を犯す、規則性のないオーラの動きは、時に残酷だ。敏感な部分を執拗に撫でたり、かと思えばその周囲で焦らすばかりの動きを続けたり、意思を持たぬが故の自由さでクラピカを追い詰める。

「……あ、あぁッ!!」

一際、大きな悲鳴を上げて、クラピカが大きく顔を仰け反らせる。
クラピカの右手と、首の距離が離れて、鎖がクラピカの首を……

「ッおい、クラピカ!」

慌ててクラピカの頭を掴み、位置を戻す。クラピカは、コホコホと小さく咳き込んだ。

「お前な、自分で自分の首絞めてどうすんだ、気を付けろよ」
「ふ……っ、うぅ……」

もはや答える余裕すらないのか、小さく首を振って、クラピカはただ荒い呼吸を繰り返す。
オレは右手でクラピカの頬を撫でるようにしつつ、変な方向へ首を動かせないようストッパーとした。
クラピカは酸素を求める脳に口呼吸を余儀なくされたらしく、既に呼吸に混じる喘ぎを隠せないでいた。
ふとその瞳が開くと、オレの視線に気付き、弱々しくオレを睨み付ける。

「……見る、なっ」
「だって、首動かせねーし。嫌でも視界に入るだろ」
「………っ」

多少の余裕があったはずの呼吸が、徐々に乱れていく。俺を見つめる余裕のあった顔が、桜色に染まり、ただ悶えることしか出来なくなっていく。これほどじっくりとその変化を眺めるのは初めてで、オレはいつもとは異質な劣情を覚えていた。
苦しげに呼吸を繰り返し、艶めかしく震える唇に惹かれ、そっとオレの唇を近付ける。

「……や、めろっ」

容赦無く顔面を左手で押され、拒まれる。

「えー…駄目?」
「する、なら、……これを止めろッ」

情欲に濡れた顔でそう言われると、やめるどころかまだまだ続けたくなる。このまま強引に唇を奪い、虐めたくなる。
そんな欲望を抑えて、クラピカの希望どおり、オーラの塊の動きを止める。クラピカは当然、安堵の表情を浮かべた。しかしそこには僅かに、もどかしさが滲み出ている。

「これなら、キスしていいのか?」
「…………」

呼吸を整えながら、クラピカはオレを見上げる。
その赤い瞳に拒絶の意がないことを確認して、再び唇を近付ける。

突然、クラピカの纏うオーラが強さを増した。……練、だ。それは数秒で終わった。
オレはおそらくキョトンと間抜け面を晒していて、クラピカはそんなオレを見て妖しく微笑している。
何かを企んでいるのは明白だが、意図を聞いてやるのも癪だ。オレは予定どおり、クラピカに唇を重ねた。

「ん……っ」

触れ合わせただけで、クラピカは微かに震える。
焦らすように何度か角度を変えて、唇の感触だけを暫し楽しむ。それからそっと、舌で唇の合わせ目をなぞる。薄っすらと開いたそこへ舌を侵入させると、

「……ッ!!?」

舌先を襲った衝撃に、オレは思わず舌を引き、顔を離した。……危ない、つい勢いで首を引きすぎて、クラピカの首を絞めるところだった。
舌を襲ったのは、驚くほど極端な『 辛味 』。毒を連想させるほどのそれに不意打ちされ、オレは思わず舌を引いたのだ。
そんなオレを見るクラピカの微笑は、どこか楽しげだ。ああ、嵌められた。

「緋の眼になった時、どの系統の能力も100%の威力で使用できると教えただろう。その状態で水見式を行うと……」

クラピカが小さく舌を出すと、塩の結晶のような不純物が乗っていた。水見式で不純物が現れるのは、具現化系だ。
味が変わるのは変化系。
色や量は暗くて分からないが、要するに全系統の変化が起きるということなのだろう。口内をグラスに見立て、水見式のように唾液を変化させたのか。

「せっかくなら、甘く変わってくれりゃ嬉しいのに」
「それは残念だったな」
「ってか、お前も口ん中、相当辛いだろそれ」
「まあな」
「……無駄に我慢強すぎるぜ、お前」
「そうか?」

涼しげな表情のクラピカを前に、ここで引いては男が廃る。
オレは意を決し、再び唇を合わせた。
……分かっていれば驚くことはないが、しかし、やはり辛い。カレー屋の名物激辛メニューに採用できそうなほど、辛い。
誤魔化すようにオレの唾液を積極的に送り込むと、クラピカもまた積極的に飲み込んでいた。いつもの、口から溢れるのを恥じらって、仕方なく飲み込む動きとは違う。やっぱりお前も、辛かったんじゃねーか。

「んん……ッ」

舌を甘噛みすると、ビクビクと震える。その反応はいつもどおり敏感で愛しくなる……のだが、なにしろ辛い。キスを楽しんでいるのだか、激辛グルメを楽しんでいるのだか、何が何やらだ。
オレは、クラピカを逃さないよう顎を右手で固定したうえで、動きを止めていた五つのオーラを、またクラピカの肌の上で動かし始めた。

「……んぅッ!? …んっ、んんぅ…ッ!!」

クラピカは抗議するようにくぐもった声を上げ、オレの肩を叩く。
“キスするなら、オーラの動きを止めろ”。それが約束だったのだから、当然ではある。
ただ、オレとしてはこんな激辛キスをさせられるなんて想定外なわけで、多少の意趣返しは許されるはずだと思う。

今度は明確にクラピカを追い詰めるため、二つのオーラを、クラピカの二つの胸粒へ。更に二つのオーラを、クラピカの、きっと既に勃ち上がっているその芯へ。残りひとつは、これまで通りランダムに体を撫でさせる。
そして全てのオーラの塊に、撫でるだけではなく、軽く振動させる動きも加えた。

「んッ、ん、……っ、…んんー……ッ」

首を振ろうとするのを、顎を押さえて封じた。
敏感な胸先は、振動を与えられ、捏ね回される。
勃起してしまった最も敏感な中心も、振動するオーラに左右から擦り上げられる。
オーラの塊による無機質な愛撫に完全に意識を奪われているらしく、クラピカの舌も唇も一切の抵抗をなくしている。オレは口腔を好き勝手に蹂躙しながら、口呼吸を求めて時折 唇を大きく開くのを、オレの口で覆い直して遮った。
クラピカの左手は、細く震えながら、オレの肩口を掴んでいる。

「……ッん、ん、んぅ……っ」

オレの顔にかかる鼻息は、荒く熱く、苦しそうだ。
つい先ほどまでランダムに触れてくるオーラに焦らされていた体は、直接的な刺激を悦び、あっという間に高まっているようだ。きっともう、すぐにも果ててしまうだろう。
このまま、クラピカが果てるまでじっくり楽しむのも悪くはない。そう思いつつも、ごまかせない嫉妬心が沸き起こる。やはりクラピカをその瞬間に導くのは、オレ自身でなくてはいけない。オレ以外がクラピカを絶頂させるだなんて、例えそれがオレの命令で動くオーラの塊だとしても、嫉妬の対象だ。

オレは右手を顎から離し、オーラの塊を退けて、クラピカを握った。

「っんは、……はぁ、はぁッ、あぁっ」

クラピカは顎を解放されると同時に、首を振ってオレの唇を逃れ、ようやく許された口呼吸を繰り返した。
握ってみると、クラピカは既に先走りでべとべとに濡れ、絶頂が近いことが明らかなほど張り詰めている。オレの見えないところでこんなに焦れていたのだと思うと、妙に楽しかった。
そのまま激しめに扱ってやると、クラピカは首を振り、髪を乱した。

「顔、あんまり動かすなよ。下手すると首が絞まる」
「んっ、は、あッ、……無理…だ…っ」
「無理って、お前が仕掛けたくせに…」

クラピカと繋がった手を使って、クラピカの頭の位置を固定してやる。
首をあまり動かせなくなったことで、与えられる快楽を逃がす方法を奪われ、クラピカの表情がますます歪む。
下はオレの手で責められ、左右のオーラに胸先を集中的に責められ、余った三つのオーラが身体中を這う。
既に体は、絶頂の直前だ。

「あぁ……ッ、はっ、あ、あああぁ……ッ!!」

泣きそうな、苦しそうな、でもどこか恍惚とした表情を浮かべて、クラピカは最後の悲鳴を上げた。






ぐったりとシーツに沈み込んだクラピカの目蓋にキスを落とし、まだ肌を犯しているオーラを回収した。
クラピカが脱力している隙にと、オレは手ごろな道具を探した。なにしろ鎖に動きを制限されて、右手の届く範囲でしか物が取れない。ちょうどヘッドボードの棚に、資料作りに使ったばかりの太めの黒い油性ペンを見つけ、手に取った。

「……、レオリオ……?」

息を荒くしたまま、クラピカがうっすらと目を開く。
ペンを取った際の、カタンと異質な音が気になったらしい。

「……油性マジック……」
「そう。お前は具現化系の鎖と、変化系の水見式、二種類使っただろ。オレも放出系だけじゃ、芸がないと思って」
「………?」

クラピカは、未だ絶頂の余韻で焦点の定まらない瞳で、ぼうっとオレを見ている。

「系統別修行、操作系レベル1。手に触れた小さな無機物を動かす。これは、修行で使うにはちょっと大きすぎるけどな」

六性図において操作系は放出系と隣り合っていて、相性は良い。
念を込めると、油性ペンはブルブルと激しく振動を始める。
クラピカは振動するペンを、ただぼんやりと見つめている。オレの意図は、分かっていないようだ。

オレは、またオーラの塊を一つ出した。今度は少し細長い形で、指三本分程度の太さにする。
それを振動させた状態で動かし、クラピカの入口へと当てがわせた。

「っひ……!?」

クラピカの体が跳ね、目が見開く。
そして振動するペンを見て、ようやくその目的を理解したらしく、怯えるように凝視した。

「オレのオーラと、これ。 挿れるなら、どっちがいい?」
「……悪趣味な…ッ」
「お前のコレも、けっこう悪趣味」

首に巻かれた鎖を指で揺らし、音を立ててやる。
クラピカの目の前で見せつけるペンには 『 極太 』 の文字が躍っているが、今の使用目的を考えれば極太と呼べるほど太くはない。指よりは、それなりに太いが。

「選びな、クラピカ」
「………ッ」

クラピカは追い詰められた小動物のような表情で逡巡していたが、やがて震えながら口を開いた。

「……鎖を、解除する。お前も、もう……」

事実上の敗北宣言。
オレが速やかにオーラの塊を消し、ペンを手放すと、クラピカは安堵したように小さく息を吐いた。

「あ、でも、鎖は解除しなくていいから。オレ、最初に言っただろ。オレの首にも鎖を巻けって」

クラピカは、意表を突かれたようにオレを見上げた。
クラピカが何故、鎖を巻いてするなんて突飛な行為を思い付いたのかは分からないし、どうせ聞いても答えない。
ただ、特に十二支んとして再会してからのクラピカはどこか自虐的だ。自分の首にだけ鎖を巻いたのも、どうせなんらかの自己嫌悪の発露だろう。

「お前がこの状態でしたかったんなら、鎖はこのままで、オレは構わねーけど」

苦しみこそ自分に相応しいと思うのなら、それでもいい。
ただ、こんな時ぐらいは。

「オレの首にも巻けよ。お前が苦しい時には、一緒に苦しみたいから」

少しの間があった。クラピカは無表情のまま、何か考えているようだった。
それでも結局、鎖はクラピカの首と同じように、オレの首にも巻き付いた。……なかなか容赦なくキツい。引っ張らなくても、少し呼吸を遮られる。

「この鎖でお前を苦しめることは本意ではない。せいぜい気を遣うことだ」

クラピカは自分の苦痛には鈍感なくせに、他人の苦痛にはやたらと敏感だ。だからオレは、本気で気を付けなくてはならない。

「まーそりゃ、一緒に苦しいより、一緒に気持ち良い方がいいよな」
「…ッ、」

蕾を探り当て、指を押し当てると、クラピカが息を飲み、体が少し強張る。

「なぁ、ここで一緒に、気持ち良くなろうな」
「………あ、…ぁ……っ」

ゆっくりと指を侵入させる。
たった一本、痛みはほとんど生じないはずだが、それでもクラピカは緊張からか身を固くしてしまう。
額に、目蓋に、頬に口付けて、緊張が解けるよう促していく。

「しっかし、アレ、そんなに嫌だったか?」
「………っ」
「指よりアッチの方が、気持ち良く慣らせそうだけど」
「…そんなはずは、ない。お前の手の方が、良いに、決まって、……ッ」

たまには、鎖でがんじがらめの不自由な行為も悪くはない。
首の位置を動かせないから、ずっとクラピカの表情を見ていられる。こんな愛しい表情も、見逃さずにいられる。

そっと口付けると、口内は未だピリリと辛かった。